今日で東日本大震災から6年になります。今日、14時46分にはサイレンが鳴り、1分間の黙とうを行いました。
私が暮らす街は、岩手県沿岸北部のとある津波被災地です。
三陸に生きる者として、今日だけはこの話題を欠かすことはできません。
被災経験を風化させないために。いつか必ず再来する津波の犠牲を少しでも減らすために。
(以下、長文ですので時間があるときにお読みいただければと思います)。
6年前の大地震で、港にいた私は近くの建物に避難しました。昭和8年の津波を経験した方から「木造建造物は流されたが鉄筋は大丈夫だった」と聞いていたからです。自分としては、念のため避難はするものの、津波なんてくるはずがないと思っていました。安全な高台に上がることもできましたが、要するに甘く見ていたのです。
地震から約45分後、私は建物の5階にいて、九死に一生を得ました。なんとか助かりましたが、1フロアでも下にいたら命を失っていました。一瞬で町の半分が流失しました。「こんな高さまで波が届く訳がない。今の時代に津波なんか起こるはずがない」三十余年人生で形成された先入観は、目の当たりにしている現象を受入れることはできず、現実とは思えませんでした。
後の発表では、その場所の津波の高さは25mで、当然犠牲になった方もいます。私については、幸い家族も高台にある自宅も大丈夫でした。
大津波以降、物流も通信も途絶え、あれほど広域で被災しているものとは知る由もありませんでした。直接的な知人は皆、無事でしたが、間接的な知人は大勢亡くなりました。
翌日以降、凄すぎる惨状に、どうしていいかわかりませんでした。家が流されてはいないのですが、食料の流通が止まっているので、兵糧攻め状態です。自分だけならともかく、妻もいればまだ幼い息子3人もいます。
何をどうしていいかわからず、とりあえず避難所を手伝いに行くと、実は食材の余りが発生していました。余っていたのは、賞味期限切れのパンとか、カップラーメンとか…。ただし、それは贅沢でもワガママでもなく、子どもや若者ならともかく年輩の方にとって、食習慣的に食べてこなかったものを急に出されて、ましてや家や知人を失った極限的な精神状況で、喉を通らないのも無理はありません。しかし、家がある自分が「食べ物を分けて下さい」とは言えませんでした。
ガスはプロパンだったのでとりあえず使えましたが、そもそもガス屋さんが流されているので、切れたら充てんできません。大人はほぼ車しか乗らない車社会なのですが、ガソリンの流通が止まっているので、自転車で移動しました。
2週間程度で物流がある程度回復し、生き延びる目途がたちました。
世界中のたくさんの方から様々なご支援をいただきながら、復興への歩みが始まりました。
・鉄道は、震災数日後から、可能なところから営業再開されました。
・1か月ちょっとで、通信が回復しました。
・多くの漁船が流失し全国的な船不足の中、漁船の購入について国が支援するとかしないとか、なかなか方針が決まりませんでした。一部漁業者は、国を待っていたらいつまでも動けないと、自主的に船探しを始めました。
・約3か月半で仮設住宅が建設されました。
・夏には観光受入が再開しました。当然、不謹慎論もありましたが、津波被災地のほとんどは観光地です。観光地である以上、自粛していたら経済は回りません。
その後も次々と復旧は進み、現況は次の通りです。
・仮設住宅から復興住宅への移転は完了。浸水区域には、商業施設や公民館等は建てても、人が住む家は建てられなくなった。ゆえに、復興住宅は震災前の家とは別の場所になり、地域コミュニティーが分断されている。コミュニティーの中で生きてきた人にとっては非常に大きな問題。
・道路、鉄道等は震災前の状況には回復。現在、沿岸に高速道路を建設中…完成は5年後くらいだろうか?しかし、今は部分開通だから良いが、完全開通して有料道路になったら、地元民はお金を払ってまで使う人は少ないだろう…。
・堤防は建設中、まだ計画の半分もできていない。しかし、そもそも…必要か?
堤防のデメリットとしては…
・観光地としての価値を損なう(海が見えにくくなる)
・漁村としても非機能的(漁民は海を見て出漁判断する)
・莫大な公費、資材、人材がかかり、住宅や道路の再建に支障がでる(時間がかかり、コストも上がる)
・油断の原因になる。どんな堤防でもそれを超える波はありえるのだから、とにかく逃げることを身につけるべき。
・海水がアルカリ化し、海洋環境に悪影響を与えている。因果関係はハッキリしないが、実際漁獲量は大きく低下している。
・浸水区域に住宅はないのに、波を食い止める意味がわからない。
とりあえず、以上です。
なお、私の町は比較的被害が小さく復興も早い方で、他の町では仮設に暮らしている方もたくさんいます。
これまで様々な形でご支援くださった皆様には、心より感謝申し上げます。
今、具体的にどうしてほしい、ということはありません…いや、わかりません。去年だけでも、国内では糸魚川、熊本、鳥取、北海道、そして岩手(宮古市、岩泉町、久慈市は津波と台風水害の2重被災)と、大きな災害が多発し、ここだけじゃないのはわかっています。
ただ、忘れないでほしい、それだけです。
皆様、長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
posted by たけとんぼ at 17:57|
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